<過労自殺>厚労省が労災認定 係争中に国が一転、認める

富士通でコンピューターソフトの開発を担当していた神奈川県厚木市の男性社員(当時28歳)の自殺について、厚生労働省が労災認定を認めたことが明らかになった。自殺は長時間労働によるものだとして、両親が労災認定を申請したが、厚木労働基準監督署が却下、それに対する審査請求も棄却されていた。両親が東京地裁に不支給取り消しを求める訴えを起こし、係争中に国が一転して認定する異例の展開となった。国側は理由として長時間残業による精神障害と認定したことを挙げており、あいまいだった過労自殺の労災認定に、新たな基準を示す事例となりそうだ。
 男性の両親の代理人となった川人博弁護士によると、男性は大学院を修了して00年に同社入社。医療事務開発グループで、医療事務システムの操作マニュアル作成に携わっていた。午前8時ごろ出社し、午後10時を超えて帰宅する日が多く、自殺前7カ月間の時間外労働時間は月60時間を超え、自殺前1カ月は徹夜を含め180時間を超える時間外労働をしていた。
 また、会社の業績不振やリストラを苦にして、「酒を飲まないと眠れない」などと周囲に訴えていた。02年3月に社員寮の自室で自殺した。
 男性の両親は過労による労災だとして同年、厚木労基署に申請。04年に却下されたことを不服として、05年に神奈川労働保険審査会に審査請求したが「数週間にわたり必要最小限度の睡眠を確保できないような状況ではなかった」などと棄却された。同年に労働保険審査会に再審査請求、東京地裁にも不支給取り消しを求め提訴した。
 先月30日に厚労省が一転して認定を決め、12日に厚木労基署が両親に謝罪した。その際、労基署は▽再調査で残業を長時間と認定▽自殺3日前に急性ストレス反応を発症していた――などと認定理由を説明した。具体的な残業時間の基準には言及しなかった。川人弁護士は「長時間労働が、自殺の背景となった精神障害の原因なのは明らかで、脳、心臓の過労死と同じように一定の時間外労働時間を超えれば過労自殺と認定すべきだ」と語った。【東海林智】
 ◇明確な認定基準がないという問題が背景に=解説
 異例の展開をたどり、労災認定となった富士通男性社員の過労自殺。同じ過労による労災でも、脳や心臓疾患と比べ、自殺の裏にあるうつ病など精神障害については、明確な認定基準がないという問題が背景にある。
 脳、心疾患の労災は、発症前1カ月間に100時間を超える残業、または2〜6カ月間に月80時間を超える残業があった場合、業務との関連が強いと認定される。
 一方、精神障害の場合は、残業時間だけでは業務との関連が認められず、業務のあり方や人間関係なども評価対象だ。月間100時間を超える残業をして発症しても、労災認定されないケースがこれまでもあった。
 過労死による労災申請は、毎年過去最高を更新しているが、一方で認定率は年々下がっている。過労自殺の背景にある精神障害の申請は、05年度656人(うち自殺147人)で、認定は127人(同42人)。認定率は03年度の32.2%から28.3%に下がった。
 関係者によると、自殺というだけで認定を渋る労基署もあるという。厚労省の委託研究でも、100時間を超える長時間残業で精神疾患が発生しやすくなるとしており、今回の事例を踏まえ、労働時間を認定の一つの基準とする手法を確立すべきだ。【東海林智】
毎日新聞) - 7月12日13時11分更新

この業界では時間外労働時間が200が生命維持の限界値だと言われています。
むろん、それ以下でも自殺したり鬱になって会社に来れなくなったりいろいろとあるのです。
自分は最高120ぐらいの時間外しかしたことがないので、何とかやってこれましたが、富士通でもこんなことがあるんですね。