荒れる学校

校内暴力:深刻な対教師暴力の実態浮き彫りに…現状探る
 「こら、くそばばあ。あっち行け」。小学生が教師に暴言を吐いて殴る、ける。13日に発表された文部科学省の調査で、深刻な対教師暴力の実態が改めて浮き彫りになった。一人の児童の暴力が、クラスに荒れた雰囲気をつくり出し、学級崩壊の連鎖を生む。家庭に指導力はなく、暴力の対象になった教師は休職に追い込まれる。暴力でしか自分を表現できなくなった子どもたち。その現状を探った。【高山純二、吉永磨美】

 給食の時間。小3の男児が壁や友達の机、テレビの台をガンガンとけって回る。周りの児童がはやしたて、男児の勢いは止まらない。教室の後ろでは、別の児童たちがパンをちぎって、ごみ箱に投げ入れる「遊び」に夢中だ。歩きながら給食を食べている児童もいる。

 兵庫県内の小学校に勤務する40代の女性教諭は03年10月、学級崩壊したクラスの「応援」に入り、モノをけ散らす男児を廊下に引きずり出した。「何かをけらないと収まらないなら、私をけりなさい」。男児はためらわなかった。手加減もせず、女性教諭のおなかや足を20発以上もけり続ける。担任は別の児童を指導しており、暴行に気がつかない。女性教諭にとっては、児童から受けた初めての暴力を、隣のクラスの男性教諭が助けに来るまで耐え続けた。

 3年生は2クラス。04年のクラス替えで、2クラスとも学級崩壊に陥り、さらに05年は下の学年にも「崩壊」が波及した。「指導を聞かない子どもと何度取っ組み合いをしてきたか。みんな(ほかの教師)もやられていた」。保護者会には、荒れている児童の保護者に限って欠席する。家庭での指導はもはや期待できなかった。今年度、女性教諭は耐え切れなくなって休職した。

 「すれ違いざま、何もしていないのに『くそばばあ』と言われて……。今も小学生の登下校を見ると、心臓がどきどきする。このまま退職するかも……」

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 教師の名前を呼び捨てにして、「死ね、死ね、死ね」と何度も繰り返す。埼玉県内の50代の女性教諭は、ほんの些細(ささい)な指導をしただけで、まるで幼児がじだんだを踏んでいるような小2男児の様子に戸惑った。教諭自身はまだ暴力を振るわれたことはない。しかし、暴言や児童間暴力は、実感として年々低年齢化が進んでいる。

 中国地方の小5男児が授業妨害などの問題行動を繰り返して10日間の出席停止処分を受けるなど、「厳罰化」や「警察との連携強化」を模索する動きが進んでいる。だが、女性教諭は「今の教師は、『子どもと向き合う』こと以外の負担(学校内の事務作業など)が大きくなっている。もっと子どもと向き合う時間と余裕がほしい」と漏らした。

 ◇毅然と語りかけを 

 森嶋昭伸・国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官の話 少子化、情報化の影響で、子どもたちは感情をぶつけ合い、対処することが苦手になっている。まずは「ゼロトレランス」(寛容度ゼロ指導)のように、当たり前の常識やマナーを子どもや保護者に毅然(きぜん)と語りかけていくことが大切だ。さらに、警察・地域との連携も必要になるだろう。

 ◇成果主義でひずみ 

 葉養正明・東京学芸大教授の話 個性重視の半面、競争主義や成果主義が教育現場にも持ち込まれ、そのひずみが子どものストレスとなり、暴力や学級崩壊となって表れている。学級崩壊は力で抑えることで表面的には治まったようだが、次は校内暴力という形で問題が噴き出している。対症療法では解決しない。社会構造のレベルでの問題解決が求められている。

毎日新聞 2006年9月13日 20時15分 (最終更新時間 9月13日 21時55分)

中高が荒れるというのはよく聞く話だが、いまの小学校はこんなカンジなのか。
うちの子は私立の進学校に入れよう。