消えていった5000万円

ちょっとみなさん考えてみましょう。自分が中3と仮定して、同級生に恐喝されるということを。自分の貯金も、父の保険金も使い尽くし、親族から借金をする。次第に登校もしないようになっていった。この状態から考えると、いつ自殺という最悪の結果が生まれてもおかしくない状態であった。賠償してもらえばいいじゃない。と考える方もいるかもしれないが、同級生からこれだけのお金を奪われ、暴力を受ける。この少年がどういう気持ちでお金を持って行ったのか。この崩れ掛けた精神状態を敬遠してきた、周囲の環境には言葉が出ないねぇ。
 少年親子が5000万円もなぜ支払ってしまったのか。疑問を投げかけるところだが、僕は払った少年親子を攻める気には全くもってなれない。学校側の言い分の一つに、少年が恐喝に対してはっきりと意思表示しなかったということがある。えっ? そりゃそうでしょ。普通云えないよ。相手が八人近くいたというのもさることながら、怖いのである。後ろに暴走族や、やくざグループの影を見てしまうのは当然。もし警察や学校に、このころの言葉で云うと、チクったらどうなるのか‥‥このことを考えると、簡単に自分からこのことを言い出すことはできない。仮にそれで捕まったとしても、もし少年らが釈放されたら自分はどうなるのだろうか? とか、もしバックにそのような影(やくざグループなど)がついているとしたら、もう迂闊に外は歩けない。何をされるか分からない。自分には母親しかいない。不安でしょうがないはずである。払い続けてさえいれば、少なくともお金が無くなるまでは、この絶望的な不安から逃れられることが出来る。何が中学生で暴走族だ。と云いたい人もいると思うが、現に僕の周りにもそういう人はいた。そこで、そのような少年の心理状態を察することが出来なかった学校及び警察には、果たしてその資格があるのかどうか。疑問が生じて仕方ない‥‥‥はぁ‥‥‥
 結局、少年親子は周知の通り、恐喝した少年らを訴えた。別に手遅れではない。十分に考えた上での勇気ある決断である。入院していた病室でのやりとりで、少年にその気持ちが生まれたのだが、容疑者らが次々と逮捕されていっても、少年の気持ちを晴らすことは出来ない。訴えて、逮捕されて、弁償してもらえば済む。そんな問題ではない。少年親子の不安、葛藤、憔悴しきった精神を、胴対処するのか? もしかしたら、これからが一番つらい時期かもしれない。

http://www.geocities.co.jp/Bookend/2994/5500.htm