17歳力士は“リンチ死”だった?

 大相撲の時津風部屋序ノ口力士、時太山=ときたいざん・当時(17)、本名斉藤俊(たかし)さん=が6月に愛知県犬山市でけいこ後に急死した問題で、愛知県警などは26日、制裁目的の暴行があったとして、時津風親方(57)=元小結双津竜、本名・山本順一=と部屋の兄弟子ら数人を立件する方針を固めた。死因を詳しく特定するため遺体の組織片の鑑定が進められており、その結果とそれぞれの暴行の関与によって、傷害致死や傷害容疑の適用を検討している。県警に対し、時津風親方と兄弟子らは暴行の事実を認めている。立件に向けた動きは、朝青龍問題で揺れる相撲界に新たな衝撃となった。
 ぶつかりげいこではなく、愛のムチどころでもなく、実態は集団リンチだった。斉藤さんは時津風親方からビール瓶で額を殴打され、兄弟子からは金属バットで殴られていた。
 「かわいがってやれ」。時津風親方の言葉が合図になった。5月に入門した斉藤さんは、部屋を抜け出すことがあり、死亡の5日前も実家のある新潟市内に戻った。調べでは、これに腹を立てた時津風親方は、死亡前日の6月25日に部屋に連れ戻された斉藤さんを「ビール瓶で額を殴った」と暴行を認めた。その際に「かわいがってやれ」と指示、兄弟子ら4人前後が斉藤さんを取り囲んで暴行した。
 翌26日午前には斉藤さん1人を狙った執ようなけいこが行われた。力士3、4人で約30分間ぶつかりげいこを続け、斉藤さんが倒れても、けるなどの暴行が加えられた。この間に、兄弟子の一人が「金属バットで殴った」事実を認めた。斉藤さんは同日午後2時10分ごろ、搬送先の病院で死亡した。県警は、遺体の状況から鈍器の一撃で致命傷にならなかったとみているが、集団による暴行がエスカレートして死亡につながったと判断している。
 時津風親方は同28日の記者会見で制裁目的の暴行やけいこの行き過ぎを否定した上で「ぶつかりげいこの直後に息が荒くなった」と説明していた。26日の暴行当時、時天空豊ノ島十両以上の力士は不在だったという。
 関係者によれば、入門当初から斉藤さんの素行にも問題があったとされるが、伝統のタテ社会で親方の指示は重く、死亡させるようなしごきは絶対に許されない。親方と現役力士が逮捕となれば、八百長問題、朝青龍問題以上の不祥事で国技の権威は地に落ちる。