パワハラ被害水面下で続々…予備軍たちの悲痛な声

上司の暴言などでうつ病を発症し、それが原因で自殺…。東京地裁が先ごろパワーハラスメントによる自殺の労災を初めて認定し、注目された。実際、パワハラをはじめサラリーマンの職場環境は深刻化。先月に実施された「働く人の電話相談室」でも「自殺願望」や「自殺未遂」など“予備軍”たちの悲痛な声が続々と寄せられたという。

 社団法人日本産業カウンセラー協会では、「自殺予防週間」の9月10〜16日、日本労働組合総連合会とともに全国で「働く人の電話相談室」を実施。20代から70代まで計430件の相談が寄せられ、産業カウンセラーらが対応した。

 同協会の古山善一常務理事によると、「短期間でやったものとしては相当多い数字だと思う。430件の後ろには、電話番号をメモしていてもかけられなかった人もたくさんいるはずですから」と話す。相談は30−50代の働き盛りが多かったというが、実際にどんな悩みが寄せられたのか、一部を紹介する。

 「上司から『土下座しろ…』などパワハラを受けた。異動を願い出たが、難しいと言われた。ストレスで片頭痛や嘔吐感、何も気力がわかず、本も読めない」(男性)

 「昨日職場から戻ってきて泣き続けた。辛くて悲しくてフォークで手のひらを刺した。痛くて…少し辛さ苦しさから逃れられるような気がした。職場の人間関係が悪く、上司にどなりつけられる。夢の中までどなり声が聞こえてくる。明日も仕事かと思うと、もう限界と思う」(女性)

 「上司や周りから暴言や暴力がひどく対人恐怖症になっている。びくびくして視線も合わせられず周囲の人の目が気になって、体重も減少。夜中にも目が覚めてしまう。今すぐ会社を辞めたいが怖くて言えない」(男性)

 「前の会社でパワハラにあった。上司が頭にライターで火をつける、ひじ鉄など嫌がらせをしてくる、極端に低い評価をつけられ、体調を崩して仕事を辞めた。退職後約2年たつが、今もそれがトラウマとなって人間不信で、(次の)仕事ができない」(不明)

 17日に行われた同協会の会見によると、寄せられた悩みは、「職場の問題」が30.7%と最も多く、以下、「メンタル不調・病気」(17.9%)、「家庭の問題」(13.3%)、「生活全般」(10.5%)。「職場の問題」では基本的人権が無視されている現実、上司によるパワハラに関する相談が多数あったという。とくに中小企業、サービス業、IT関係で厳しさが目立ったとも。

 古山常務理事は「いじめともいえるようなものもあり、深刻化しているのは確か。解決のためには、悩んでいる人には勇気がいることだが、まず声を上げること、回りの人もちゃんと受け止めることに尽きる」と話す。

 同協会では今後、全国の支部を通じて面接によるカウンセリングの普及などを充実させ、状況改善を目指したいとしている。