関係者ら「すごい発見」 東大寺大仏の足元に正倉院宝物

歴史的な大発見だ――。東大寺の大仏の足元から見つかっていた金銀荘大刀(きんぎんそうたち)が、正倉院から取り出されて行方不明になっていた宝物だったことがわかり、専門家や正倉院関係者から驚きの声があがった。同寺は今後、大仏の足元を再調査する予定といい、新たな発見にも期待がかかる。

 調査にあたった元興寺文化財研究所によると、8月に大刀の修理をはじめ、X線撮影をしていた9月30日に刀身に象眼があるのを発見した。

 肉眼では表面の様子が全くわからない中、突然浮かび上がった「陰劔」「陽劔」の文字に、同研究所の坪井清足所長は「文書記録と出土遺物が、これほど見事に一致するとは予想もしなかった。この調査に立ち会えたことに、非常に感激している」と興奮気味に話した。

 宮内庁正倉院事務所の杉本一樹所長も「すごい発見。とにかく驚いた。正倉院宝物の除物の行き先がわかったのは初めてで、他の除物の行き先も確認できるきっかけになるかもしれない」と期待を寄せる。

 東野治之・奈良大教授(古代史)は「宝物をわざわざ取り下げて埋めたことが明らかになったことで、これは鎮壇具ではなく、光明皇后聖武天皇を供養するためや、悪化していた自身の体調の回復祈願のためなど、強い思いを持って埋めたものだった可能性が高まった」と話す。

 今年は、ちょうど光明皇后の1250年忌にあたる記念の年。東大寺の狭川普文執事長は「よくぞこの年に発見された。光明皇后の大きな思いがあったのかもしれず、深い感動と驚きを隠しえない」と話した。

 今回の大刀を含め、これまで大仏の足元3カ所から鎮壇具が見つかっているが、周囲に別の宝物が眠る可能性もある。同寺は「寺としてもデータをきちんと押さえ、今後の学術研究に役立てられるよう、出来る限り協力していきたい」としている。