日弁連会長選―利益団体でいいのか

むこう2年間の日本弁護士連合会のかじ取り役を決める会長選挙は、当選者が決まらなかった。元事務総長の山岸憲司氏と現会長の宇都宮健児氏との間で近く再投票が行われる。

 ここまでの論戦を見て改めて感じるのは、弁護士がどんどん内向きになっていることだ。

 仕事がないのに数だけ増えている。競争が厳しく収入も減り気味で、あこがれの職業でなくなりつつある。会内のそんな声を反映し、両氏とも年2千人の司法試験合格者を1500人以下に減らすよう訴えている。

 はたして多くの国民は、これをどう聞くだろう。

 私たちも無理な増員を進める必要はないと唱えてきた。だが本当に弁護士は社会にあふれているのか。人々の法的ニーズは満たされているのか。

 たとえば原発事故の賠償が進まない。原因は様々だが、被災者が弁護士の助けを受けられないまま申請してくるため書類不備がめだち、和解手続きが滞っている現実があると聞く。

 日本企業への信頼を失わせたオリンパスの役員に、法律家は一人もいなかった▽国境をこえたトラブルの防止や解決を任せられる弁護士がきわめて少ない▽いわゆる弁護士過疎地で、やる気のある若手が仕事を始めたら、介護や生活保護をはじめとして人権にかかわる多くの問題が掘りおこされた――。

 ほかにも、実態と弁護士業界内の「世論」とのギャップを示す話はたくさんある。

 山岸氏は法律家が取り組むべき課題を選挙公報に並べ、宇都宮氏も「膨大な数の人々が権利保護から取り残されている」と書く。その声なき声に縮み志向でどう立ちむかうのだろう。

 事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける。そんな昔ながらの弁護士像はもはや通用しない。

 法科大学院のありようを見直したり、必要な法律や制度を整えたりするのはもちろんだが、同時に弁護士が意識を改め、仕事に向き合う姿勢を見直していかなければならない。

 残念ながらこの2年間、日弁連のなかでそうした問題意識は十分な深まりを見せず、はた目には既得権益の擁護としか見えぬ主張を繰り返してきた。

 弁護士、そして弁護士会は、民間の存在ながら司法権の行使に深くかかわる。強い自治権をもち、自ら行動を律することが国民から期待されている。目を大きく開き、世の流れをしっかり見すえてほしい。