株価急落 解説 「楽観論偏重」のもろさ

【ワシントン木村旬】中国・上海市場に端を発した株価急落は日米に波及、世界的な同時株安に発展した。直前まで世界的な株高に沸いていたのが一転した形で、過熱気味の中国経済や米景気の先行きに対する楽観論に寄りかかっていた市場のもろさが露呈した。ただ、米国経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)に大きな変化があったわけではなく、世界の株式市場がこのまま下落局面に入るとの見方は少ない。
 米景気は減速懸念が強まっていたが、昨年秋以降の原油価格下落や米利上げ休止を好感して、ダウ工業株30種平均は昨年10月に6年9カ月ぶりに史上最高値を更新。その後も、米景気は巡航速度に軟着陸するとの観測を背景に強気の相場展開となっていた。出遅れていた日経平均株価も米景気への楽観論を材料に、今月22日には6年9カ月ぶりに1万8000円の大台を回復した。
 だが、市場では「米景気は腰折れの危険性は少ないが、格別に良好というわけではない」(米エコノミスト)という見方は根強く、昨年来の株価上昇には「買われ過ぎ」との警戒感もくすぶっていた。そこに、中国の株価急落や米景気の弱さを示す指標が重なったことから、投資家心理が一気に冷え込み、今回の世界的な株価急落につながった。
 中国など新興国への巨額投資の背景には、日本の低金利で円を借り新興国通貨に替えて運用する「円キャリートレード」で世界的に資金が過剰になっていたといういびつな状態があった。さらに、イランの核開発問題など地政学的リスクもここにきて顕在化し、「金融市場や国際情勢の不安定な状況を軽視してきたツケが回ってきた」(米アナリスト)とも言える。
 市場では「米中景気が一気に底割れする恐れは小さく、株価も一時的な調整局面」との見方が多い。ただ、株価の調整が長引くと、堅調に推移してきた世界経済の波乱要因となりかねない。