就職活動で続く学歴差別「慶応と一橋を取れ」の声も

今回は「学歴差別」の実態についてレポートしよう。

 最近では、新卒採用において、エントリーシートなどに学校名を記入しない採用を行う会社が増加している。リクルートの調査によるとその割合は実に4割にも達している。一方、いまだに学生から「自分は○×大学なのですが、門前払いされたりしないのでしょうか?」、「学歴差別は、実際のところあるのですか?」などの相談を受けることも多々ある。

 実際はどうなのか?  結論から言うと、「学歴差別」は現在も強烈に存在している。今回は、人事仲間から聞こえてきた情報を元に、学歴差別に関する実態をレポートする。

 某大手保険会社の総合職採用は、明確に学校差別を行っていることで有名だ。名目上は自由応募になってはいるが、選考の際には学校名による選別を行っている。採用基準に当てはまらない学校名のエントリーシートはすべてダンボール箱ごと処分している(もちろん、個人情報管理の関係で、期間をおいて処分するルールではあるのだが)。表向きのオープンなスタンスは名ばかりというわけだ。ちなみに、学歴差別は企業イメージ、採用スタンスとは全く関係なく、一見善良そうな企業が行っているから注意が必要だ。例えば教育関連の出版社、人材ビジネスなどは、企業メッセージとは裏腹に、学歴差別の常習犯だ。

 学校差別採用は当然、行っていることがわかると槍玉に挙げられるので、それをカモフラージュする手段を用意することもポイントのようだ。エントリーシートの選考や面接とセットで、SPIなどを実施する企業も多数ある。「面接やエントリーシート、SPIなどで総合的に判断します」など、もっともらしい答えをしている。実際には、SPIの点数を全く考慮していないケースや、相当のSPI上位者以外は大学名で切り捨てているケースも多々あるわけだ。

 また、学歴差別採用は日本の大企業だけでなく、実は外資系企業の方が顕著である。外資系企業は人事スタッフが少ないケースも多く、採用活動に手間暇をかけられない実情がある。そのため、学校名による選別を初期段階で行うことにより、採用効率を高めている。さらには、日本国内での他社とのリレーションを強化するべく、上位校の中でも学校を選ぶ傾向さえある。ある外資系の医療機器メーカーは「必ず、慶応と一橋からは内定者を出すように」という指示が飛んでいるケースがある。なぜ、慶応と一橋かというと、OBが経済界の要人に多数いるからである。

 一方、学歴不問採用を行っていても、結果的に上位校に内定が集中しているケースもある。1990年代後半にトヨタソニーは学校名を書かないエントリーシートを導入し話題になったが、ふたを開けてみると、結果として上位校だらけだったという。学校名不問にし、門戸を開いても結果として残ったのは上位校だったというわけだ。

 気になる学歴と就活の関係。次回は、学生の動きや最近の変化にもスポットを当てつつ、この根幹の部分に迫る。

文■谷村ジンジ(メーカー人事部勤務)