【断 井口優子】アメリカはなぜ嫌われる?

 私には恋人が2人いる。どちらもそれぞれに魅力と欠点を持つが、どちらの欠点を指摘されてもいきり立って弁護に回る。それぞれを愛し、どちらかをあきらめることは難しい。しかもどちらの恋人のもとにいても、もう1人に心を残して居心地が悪い。自分の生まれ育った日本と15年間住んだアメリカはこのような少々やっかいな恋人となってしまった。

 このコラムを書き始めた1年半前は、日本に腰を落ち着けて2年ほどがたったころだった。日本のいやな部分がやけに目につきアメリカの良さと比較して断じたが、近頃(ごろ)は日本の良さも身に沁(し)みて、日本を褒める原稿を書きたいと、2人の恋人にふりまわされる。

 そこで今回はアメリカが世界から嫌われる理由をあげてみる。なんといってもフロンティア精神が持つ負の側面の「野蛮さ」だろう。建国の憲法に保証された「幸福の追求」を単純に信じて、前へ前へと進むのはいいが、行く手を阻む者があれば力でねじふせる。かつては先住民を殺し、今は他国に戦争をしかける−と、ニューヨークに住むアメリカ人の友人に言ったなら「それはブッシュを支持するひとたちのアメリカでしょう。リベラルなアメリカ人はもっと洗練されています」。

 そんなことは先刻承知。多様な面を持ち、長所が短所に、短所が長所にひっくりかえるのは日本も同じ。そんな2人の恋人を660字で比較するのはチャレンジだったが、このあたりで私のコラムの筆を置かせていただく。ご愛読をありがとうございました。(評論家)


http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/080318/acd0803180310000-n1.htm