人間関係

役所にかぎらず、組織人として働く以上、まず何よりも求められる能力が人間関係対応能力です。決して法律の知識ではなく事務処理能力でもないというところがポイントです。

組織に勤める人はみな口をそろえてこのように言います。

「仕事の半分以上は人間関係だ」

もちろん公務員も例外ではありません。むしろムラ社会の公務員にこそ当てはまる金言かもしれません。

どんなに卓越した事務処理能力を誇り、法律や技術についての専門知識を豊富に持っていても、周りの人間とコミュニケーションをとっていかなければ、それらの能力はまったくのムダとなってしまいます。

自分一人だけでできる仕事の範囲など、たかが知れています。周りの人間の助力を得られなかったら、自分一人だけが夜遅くまで残業するはめになります。

せっかく組織の問題点を発見しても、自分一人が悶々と悩むだけで誰も解決のために動いてはくれません。

会議であなたが発言しても、誰も何の反応もフォローもしてくれないことでしょう。

せっかくの自分の発案も、まわりの人間に受け入れてもらわなければお蔵入りとなってしまいます。

自分と周囲の人間のあいだで望ましいコミュニケーションができていなければ、そもそも自分の意見すら聞いてもらえません(意見の中身がどんなに素晴らしくとも)。

みなさんもきっと思い当たるフシがあるはずです。

グループの中で「鼻つまみ者」のAさんが発言し、言っていることはもっともなんだけれど、「鼻つまみ者」であったために、他のメンバーはAさんの発言に対して無反応、まるで聞いていないフリ。つまりAさんのような立場になってはいけないということです。

職場の先輩、後輩、上司などは、必ずしも仕事がしたくて役所に出勤しているとはかぎりません。みなさんが問題の解決のために何かを提案したとしても、余計な仕事を増やしてくれるなということで、かえって迷惑がられ、敬遠されるかもしれません。

反対に、みなさんがあまり仕事をしたくないキャラであったとしても、仕事に厳しい職場に放り込まれればそうも言っていられなくなります。コワイ先輩や上司の叱責や、マジメな後輩の突き上げの中で針のむしろの毎日を送ることになるでしょう。

そんなとき迷惑がられ、敬遠されるようなキャラであっては仕事ができない、というよりそもそも生きてはいけないということです。

そこで迷惑がられることなく、周りの人間と仲良くしつつ自分の提案を通すなりうまく泳ぐなりが求められるわけです。

さまざまな思惑を持った人間が混じっている複雑な人間関係の中をうまく泳ぎ渡る能力。うまく泳ぎつつ、しかも決して「逃げ」や「こざかしい処世術」だけで終わらせることなく、自分の責任や役割をまっとうする能力。これらの能力があってようやく役所の中で満足のいく仕事ができます。

そこまでデキる職員は実際にはなかなかいませんが、だからこそ、そのような素質のある受験生が求められるわけです。マトモな役所であるほど、デキる職員候補に飢えているのです。

ただ、中には、仕事本来の処理能力や自己研鑽は放り投げたままで、人間関係を泳ぐことだけで日々を乗り切り、まちがってエラくなってしまう輩もたまにいます。

とんでもないといえばとんでもないですが、しかしそれと同じくらい、事務処理能力はあるけれど人間関係はまるでダメという職員も、とんでもないことです。

そして、面接の重要な目的の一つが、人間関係対応能力に欠ける人を排除することであり、そのための質問が、学生時代に何をやっていたのかという質問だといえます。

また予備校の話になりますが、予備校で勉強した経験というのは、もちろん受験仲間が予備校にいるにせよ、その中ではみなさんは他人に対して何の責任も負わず、何の「役割」も果たしていません。予備校での経験は、組織人としての経験としてはゼロに等しいわけです。

だからこそ、学生のうちは、筆記試験の勉強ばかりしていないで、よく学び、そしてよく遊んでおきましょう!?

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