法科大学院期待外れ 乱立で司法・就職浪人あふれる

9月21日8時0分配信 産経新聞


 法科大学院を出れば「7、8割が合格」と見込まれていた新司法試験の合格率が3割強と低迷し、大学院修了者の無職化が問題となっている。法科大学院が乱立し、受験者が増え、高い合格率を信じて入学した学生がほうり出された形だ。“司法浪人”の解消や社会人の活用が期待された法科大学院導入だったが、就職難は相変わらずで、関係者は「統廃合を進めて定員を絞るべきだ」と訴える。(西川貴清)

 新司法試験合格者が発表された今月11日、旧法務省祝田橋庁舎(東京都千代田区)の掲示板前を祈るような表情の受験者たちが埋め尽くした。3回目の受験で合格した埼玉県春日部市の東大法科大学院出身の男性(27)は「不安で眠れなかった」と安堵(あんど)の表情を浮かべたが、沈痛な面持ちで立ち去る人も多く、明暗が分かれた。

 3回目となった今年の新司法試験は6261人が受験。うち2065人が合格し、合格率は過去3回で最低の32・98%だった。当初、政府の審議会が出した法科大学院修了者の合格率の目安「7、8割」とはかけ離れた結果になった。

 「高い合格率を信じたのに…」と嘆くのは、2年前に慶応大学法科大学院を修了した男性(29)。東大在学中と卒業後、計2回受験したが不合格。転機を求め法科大学院に進学し、修了後、2回受験したが合格には至らなかった。

 今年は受験をあきらめ、一般企業への就職を目指したが、「既卒で年齢も高く、どの企業も面接すらしてもらえない」と、これまでの司法試験浪人と同様の壁に直面している。現在は定職もなく、親の仕送りで生活しているという。

 司法試験受験からの転向組に就職をあっせんする「モアセレクションズ」(東京都渋谷区)の上原正義社長によると、昨年秋から約300人が相談に来たが、うち40人しか就職できなかった。上原さんは「司法試験受験者は社会人経験の少なさ、年齢から企業に敬遠される傾向があります」と話す。

 就職難を生み出す合格率低迷の原因として挙げられるのが、法科大学院の乱立だ。

 法科大学院の設立が認められた当初、目標は20校程度だった。しかし、ふたを開けてみれば設立は74校で、修了者が膨らんだ。法科大学院間の差も激しく、今年は合格者ゼロの大学院も3校あった。

 慶大法科大学院生は「十分な受け入れシステムもないのに法科大学院というハコだけたくさん作ってしまった。しわ寄せが受験生にきた」と自嘲(じちょう)気味に話す。

 大塚英明・早稲田大学院教授(商法)は「今後は米国のように現役弁護士の企業就職が増え、司法試験の不合格者の立場は厳しくなる。不合格で就職できない人を大量に出さないためには法科大学院の統廃合が必要だ」と話している。