さぼてん

★(追記 '08/02)
 最近、アメリカの研究家からきいた大変興味深い話を紹介します。北米サボテン、とくに難物類の自生地は石灰岩系の地質が多く、土壌のpHを計測すると中性〜アルカリ性を示すことが多いのはご承知の通り。しかし、実際にサボテンたちが発芽する降雨の際にはそれがどうなるか。
 アメリカ南西部の砂漠地帯を春先〜夏にかけて見舞うのは雷雲の発生に伴う一時的な豪雨・・・サンダーストームです。日本のようなシトシト雨は降らないため、こうした一時的にザーっと降る雷雨がサボテンたちの成長や発芽を促すのですが、これまで野生のサボテンたちを潤す雨の質まで深く考えてきませんでした。そう、よく知られている通り、雷雨は強い酸性なのです(pH3-4.5)。雷雨やスコールが酸性雨となるのは日本やほかの国でも概ね同じですが、アメリカの場合、より高標高の地域ほど雷雨の酸性の度合いが高いそうで、だいたいのペディオ・スクレロカクタスの産地では、地質はアルカリ質でも、降雨は上記のようにpH3-4.5という強い酸性になると言います。
 この観測に基づき、灌水時に食酢などを加え、pH4程度の水を与えると北米産サボテンの大半は好成績だそうで、実際、私も試してみましたが、月華玉や彩虹山で、良い感触を得ました。この結果を実生に援用して考えてみると、発芽時には水浸しになるほど雨水に浸かるわけですから、たとえアルカリ地質であっても、種子が浸される環境は酸性になるはずで、こうした条件が発芽を促す可能性は高いと考えられます。
 実際、私のこれまで行っていた、「屋外雨ざらし実生」では、梅雨明け後の激しい夕立などの豪雨のあとに一斉に発芽することが多く、上記の条件と重なる部分が多いのです。「酸性の水で腰水実生」はまだ試したことがありませんが、おそらく良い結果をもたらすのではないかと予測しています。

 この雨水のpHについての見解は、これまでの栽培についての考え方をかなり修正するものとも言えます。今後、栽培研究の成果を報告させて戴きたいと思っています。