「あらちゃん」だけじゃない 首都圏の一級河川・荒川に集まるビジネスのタネ

秩父を源流に、埼玉、東京を経て東京湾へと注ぐ一級河川荒川は、昔から農業、物流などの産業、経済面から、水道といったライフラインまで、広範囲の分野で利用されている。そしてこの荒川、最近は地域活性化起爆剤としての役割も担っているようだ。

 まずは「あらちゃん」。10月10日、埼玉県志木市内の荒川に突如出現して以来、住民票まで交付され大人気を博しているアザラシだ。

 地元のいろは商店街では、急遽Tシャツをはじめとするあらちゃんグッズ製作にとりかかった。同市の精肉店では、牛スジのアラと鳥カワがおかずになった「あらちゃん弁当(500円)」も発売している。志木市に隣接するさいたま市の浦和ロイヤルパインズホテルでは、「あらちゃんを見に行こう! 宿泊プラン」(1名8000円より/11月30日まで)や「ゴマあらちゃんパン」(1個120円/1日10個限定)も登場している。

 ちなみに、メディアの調査・分析を行うニホンモニターによると、各種メディアがあらちゃんを取扱った時間をCMスポット料金に換算すると、出現以来14日間だけで75億円になるという。

 あらちゃん特需が起こる以前から、荒川は格好の撮影スポットであった。隅田川との分岐点である岩渕水門周辺の整備を行う東京都北区は、1時間1万3050円でロケ地としての使用を許可している。このエリアは北区の景観10選のひとつに選ばれており、水辺には豊かな緑が広がり、開放感あふれる都会のオアシス的存在だ。

 さらに荒川は、川幅では日本一を誇る。埼玉県鴻巣市と吉見町間を流れる荒川の川幅は2537メートルあり、日本最大の距離なのだ。

 この川幅にちなんで、2009年に誕生したのが鴻巣市B級グルメメニュー「こうのす川幅うどん」。川幅を約8センチある幅広麺で表現した。見た目の珍しさに加え、もっちりとした麺の食感と各店趣向を凝らしたスープがマッチして、その美味しさでも評判を呼ぶ。現在、市内では、めん工房久良一の「川幅みそ煮込みうどん」(990円)ほか、9店舗にて味わうことができる。また、川幅うどんは、来る11月26日開催の「第9回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」にも参戦予定だ。

 「あらちゃん」登場など、ツキがある荒川周辺。今後も、荒川がらみのビジネス展開に注目が集まる。


(加藤 秀行 、 阪神 裕平)