セガサターン

今思えば「街」や「リアルサウンド」が売れなかった時点でサターンの負けが確定したような気がする。

ライバル関係にあったころのPSとサターン両ハードに、エニックスチュンソフトが参入した。ゲーマーたちは「どちらのハードでドラクエを出すんだろう」ということばかり話題にしていた。

エニックスが出した回答は、PSでドラクエ7、サターンでは新規タイトル「七つ風の島物語」を出すというものだった。
チュンソフトは、PSで不思議のダンジョン、サターンでは「街」
ワープは画面が無いという野心作「リアルサウンド」を発表した。

今思えば、なんて面白いラインナップだろう。PSがハリウッドならこっちはミニシアター。ポリゴン格闘やギャルゲー全盛期にあって、ユーザーに全く媚びてない。

けど、売れなかった。ユーザーはどのソフトにも興味を示さなかった。
職人的なこだわりが光る七つ風の島物語への反応は「何これ、ドラクエじゃないの?」
チュンソフトの傑作、街に対しては「えー、実写?ヤダ」
ゲーム史に残る冒険をしたリアルサウンドには「画面真っ暗?興味ない。」

「街」「七つ風」「リアルサウンド」を、なぜあえて普及台数の少ないサターンで出すのかと問われて、製作者達は「サターンの性能がこのゲームに合っているから」と答えていた。
けど本音は違ったんじゃないか。
「コアなゲーマーの多いサターンユーザーなら、見た目や流行に流されず、このゲームの魅力を嗅ぎ取ってくれるに違いない」
と判断したからじゃないのか。

しかし、サターンユーザーはそれを裏切った。好調な売り上げを記録したのは、流行の格ゲーやギャルゲーばかりだった。
街とリアルサウンドの販売本数は散々で、共に構想があったにも関わらず続編の開発は頓挫した。

セガファンは、街やリアルサウンドにもっと金を払うべきだった。
地味でも面白いゲームを作れば商売が成立するということを証明するために。
あるいは、リスク覚悟で新しいゲームを作ろうとする作り手の姿勢に敬意を示して。
こういったゲームが売れていれば、PSのメジャー路線とはまた違った方向でサターンは生きていけたような気がする。