9時−5時(AM)労働を覚悟すべき大事務所

だが、ブル弁事務所は入所後にハンパじゃない長時間労働と熾烈な競争が待ち構えている。

まず労働時間だ。一般に4大事務所のオンタイムは「9時−5時」と言われる。これは午前9時から午後5時を指しているのではない。午前9時から午前5時のことを言うのである。もちろん象徴的な意味での言い回しではあるのだが、職場のすぐ近くに住居を構え、午前9時から翌朝5時まで働き、短時間の仮眠後、午前9時には業務を開始できる。そのくらいの覚悟がなければ入所すべきではないという、覚悟を促す言い回しなのである。

パートナーですら、いやパートナーこそ日々研究を怠らず、最新のノウハウを仕入れ続けなければ、瞬く間にクライアントから見捨てられる。この程度の覚悟がなければパートナーに出世することなど、どだい無理ということなのである。

弁護士はどんな小さな事務所でも、事務所が弁護士法人であったとしても、基本的に従業員ではない。新人といえども法的な身分は自営業者である。実際に雇用保険労働基準法が適用されるかどうかは、雇用契約の有無や勤務の実態などで判断するのだが、所属していた弁護士事務所を誰か弁護士が訴えて司法判断を仰いでみないと、司法がどう判断するのかわからない。

もとより、そんなことをしても弁護士としてのスキルアップには何の役にも立たない。いずれにしても長時間労働に耐えられないと思うなら、4大事務所を目指すべきではない。

一般の企業と比較しても、弁護士の世界は働き方に対する許容度が広い。9時−5時生活を覚悟しなければならないのは4大事務所プラス一部の大事務所くらいだ。

マチ弁でもブル弁でも、総じて土日も働いている弁護士は多いが、平日に毎日3〜4時間睡眠などという生活をしている弁護士は、決して多数派ではない。

4大事務所を健康に不安を感じて辞める若手は一定数いるが、長時間労働を理由に辞めても、ほかの事務所に移籍するうえでそれ自体が障害になることはほとんどない。