入所後こそ熾烈な競争が待ち構えている4大事務所

大事務所はアソシエイトと呼ばれる弁護士と、パートナーと呼ばれるマネジメント層の弁護士で構成されている。パートナーの構造については前号で取り上げたので、今回はアソシエイトについて取り上げる。

入所すると、まずジュニアアソシエイトからスタートし、数年でシニアアソシエイトになる。アソシエイトは顧客を自力で開拓し、自力で報酬を稼ぐことは基本的には求められておらず、もっぱらパートナーの下で下働きをやりながら修行を積む。

中規模以下の事務所だと、パートナーの下働きもやれば国選弁護もやったりと、入所からさほど時間を置かない時期から、徐々にではあるが自力でのクライアント獲得も求められるが、大事務所の新人はパートナーの下請け仕事をこなすだけで精いっぱいだ。

前号で取り上げたとおり、4大事務所では、森・濱田松本以外はパートナーの構造も重層構造になっていて、シニアパートナーの下にジュニアパートナーがおり、その下にシニアアソシエイト、さらにその下にジュニアアソシエイトという形で組織が組まれている。各シニアパートナーが親分で、その下に子分が連なる構造だ。

大事務所では手間暇のかかる作業をアソシエイトに担当させ、クライアントにはその作業にかかった時間数×時間単価×人数で報酬を請求する。いわゆるタイムチャージである。

クライアントからシニアパートナーに入金された報酬がその後どうなるのかは事務所ごとに多少の違いがあるとされ、西村あさひの場合はすべていったん事務所のポケットに集中させ、そこから各パートナーに一定のルールに従って配分される。

西村あさひはアソシエイトの間は固定給+ボーナスだが、事務所によってはタイムチャージ部分だけが3分割され、3分の1は実際に稼働したアソシエイト本人に、3分の1は事務所の経費として上納され、残り3分の1がパートナーに配分されるという方法をとるところもある。

実際の作業の指示はジュニアパートナークラスか、シニアアソシエイトが行って取りまとめるので、彼らから使い勝手が悪いと思われたジュニアアソシエイトは、瞬く間に肩たたきに遭う。

最近はクライアント側のタイムチャージに対する目はかなり厳しくなっている。10年前なら弁護士事務所の言うなりに支払うクライアントはいくらでもいたが、アソシエイトがクライアントの目の前で作業をするわけではないので、単価はともかく、人数や延べ作業時間をクライアントに納得させるには相応の説明がいる。

それだけに、長時間労働もいとわずサクサク作業がこなせるアソシエイトでないと、足手まといになるのだ。したがって、使い勝手が悪い若手はしだいに業務を頼まれなくなり、同期が寝る間も惜しんで働いている中で、ひとりヒマを持て余す状況に追い込まれる。

稼働が落ちればもらえるタイムチャージも減り、手取りのサラリーは固定部分だけになる。かくして稼働が高くタイムチャージ部分の分け前をたくさんもらえる同期との差は、経済的にもスキル的にも瞬く間に開いて行くのである。